労務税務定期便 No.43 2020年12月15日号

同一労働同一賃金に関する令和2年10月15日判決について

1 令和2年10月15日に下された最高裁判所第一小法廷による判決3件は、いずれも日本郵便㈱に係るものであるところ、平成30年6月1日(ハマキョウレックス事件及び長澤運輸事件)及び令和2年10月13日(大阪医科大学事件及び東京メトロ事件)の各判例を踏まえ、有期労働契約者に対して支給されなかった「年末年始勤務手当」、「年始期間の勤務に対する祝日給」及び「扶養手当」と付与されなかった「夏期冬期休暇」及び「病気休暇」について同労働者から為された賠償請求を各々認容しました。

 すなわち、賃金については、「両者の賃金の総額を比較することのみによるのではなく、当該賃金項目の趣旨を個別に考慮するべきものと解するのが相当(平成30年6月1日第二小法廷各判決)」であり、「賞与の支給に係るもの」についても「退職金の支給に係るもの」についても(令和2年10月13日第三小法廷各判決)同様に解すべきと判示されていたところ、「賃金以外の労働条件の相違についても、同様に、個々の労働条件の趣旨を個別に考慮すべきものと解するのが相当である。」と判示しました。

2 日本郵便佐賀事件(平成30年(受)第1519号、未払時間外手当金等請求事件)

(1)事案

 本件は、郵便外務事務(配達等の事務)に従事し、契約期間を6か月以内とする有期労働契約の更新を繰り返していた「時給制契約社員」である第1審原告が、期間の定めのない「正社員」であれば与えられていた夏期冬期休暇(夏期休暇は6月から9月までに、冬期休暇は10月から3月までに、各々3日迄与えられる有給休暇)が与えられなかったとして、同休暇日数分の賃金に相当する額の賠償等の請求をしたところ、原審がこれを認容したので第1審被告日本郵便㈱が上告した事案です。

(2)判旨

 正社員に「夏期冬期休暇が与えられているのは、年次有給休暇や病気休暇等とは別に、労働から離れる機会を与えることにより、心身の回復を図るという目的によるものであると解され、夏期冬期休暇の取得の可否や取得し得る日数は上記正社員の勤続年数の長さに応じて定まるものとはされていない。そして、郵便の業務を担当する時給制契約社員は、契約期間が6か月以内とされるなど、繁忙期に限定された短期間の勤務ではなく、業務の繁閑に関わらない勤務が見込まれているのであって、夏期冬期休暇を与える趣旨は、上記時給制契約社員にも妥当するというべきである。」と判示して、夏期冬期休暇日数分の賃金に相当する額の賠償を認めました。

3 日本郵便東京事件(令和元年(受)第777・778号、地位確認等請求事件)

(1)事案

 本件は、郵便外務事務(配達等の事務)又は郵便内務事務(窓口業務、区分け作業等の事務)に従事し、契約期間を6か月以内とする有期労働契約の更新を繰り返していた「時給制契約社員」の第1審原告らが、期間の定めのない「正社員」であれば支払われる①年末年始勤務手当が支払われず、②病気休暇(私傷病による病気休暇として、正社員には少なくとも引き続き90日間までの有給休暇が認められているのに対し、時給制契約社員には1年に10日の範囲で無給の休暇が与えられるにとどまるもの)及び③夏期冬期休暇が与えられなかったとして賠償請求等したところ、原審が、年末年始勤務手当(①)及び病気休暇(②)に係る請求を認め、夏期冬期休暇(③)に係る請求を棄却したため、原被告ともに上告した事案です。

(2)判旨

ア 年末年始勤務手当は「12月29日から翌年1月3日までの間において実際に勤務したときに支給されるものであることからすると、同(郵便)業務についての最繁忙期であり、多くの労働者が休日として過ごしている上記の期間において、同業務に従事したことに対し、その勤務の特殊性から基本給に加えて支給される対価としての性質を有するものであるといえる。また、年末年始勤務手当は、正社員が従事した業務の内容やその難度等に関わらず、所定の期間において実際に勤務したこと自体を支給要件とするものであり、その支給金額も、実際に勤務した時期と時間に応じて一律である」ところ、この趣旨は、「郵便の業務を担当する時給制契約社員にも妥当するものである」と判示して、年末年始勤務手当に相当する額の賠償を認めました。

イ 「私傷病により勤務することができなくなった郵便の業務を担当する正社員に対して有給の病気休暇が与えられているのは、上記正社員が長期にわたり継続して勤務することが期待されることから、その生活保障を図り、私傷病の療養に専念させることを通じて、その継続的な雇用を確保するという目的によるものと考えられる。」そして、この目的に照らせば、「郵便の業務を担当する時給制契約社員についても、相応に継続的な勤務が見込まれるのであれば、私傷病による有給の病気休暇を与えることとした趣旨は妥当するというべきである。そして、第1審被告においては、上記時給制契約社員は、契約期間が6か月以内とされており、第1審原告らのように有期労働契約の更新を繰り返して勤務する者が存するなど、相応に継続的な勤務が見込まれているといえる。」したがって、病気休暇についての有給無給の相違は、「労働契約法20条にいう不合理と認められるものに当たると解するのが相当である」と判示しました。

ウ なお、夏期冬期休暇については、原審が「第1審原告らが無給の休暇を取得したこと、夏期冬期休暇が与えられていればこれを取得し賃金が支給されたであろうこととの事実の主張立証はない。したがって、第1審原告らに夏期冬期休暇が与えられないことによる損害が生じたとは言えない」として請求を棄却したことに対し、「第1審原告らは、夏期冬期休暇を与えられなかったことにより、当該所定の日数につき、本来する必要のなかった勤務をせざるを得なかったものといえるから、上記勤務をしたことによる財産的損害を受けたものということができる。当該時給制契約社員が無給の休暇を取得したか否かなどは、上記損害の有無の判断を左右するものではない」と判示し、原判決のこの部分を破棄し、損害額について審理を尽くさせるため原審に差し戻しました。

4 日本郵便大阪事件(令和元年(受)第794・795号、地位確認等請求事件)

(1)事案

 本件は、郵便外務事務(配達等の事務)に従事し、契約期間を6か月以内(時給制契約社員)又は1年以内(月給制契約社員)とする有期労働契約の更新を繰り返していた原告らが、期間の定めのない「正社員」であれば支払われる①年末年始勤務手当、②年始期間の勤務に対する祝日給及び③扶養手当が支払われず、④夏期冬期休暇が与えられなかったとして、賠償請求等したところ、原審が、④を認めて③を認めず、通算雇用期間が5年以下の者に対しては①及び②も認めず、同期間が5年を超える者に対して①及び②の一部を認めた(認めるにとどまった)ため、原被告ともに上告した事案です。

(2)判旨

ア 年末年始勤務手当(①)については、前記(3(2)ア)と同様の判旨を述べ、年始期間の勤務に対する祝日給(②)については次のとおりに判示して、正社員と契約社員との間に労働条件の相違があることは不合理であるとし、通算雇用期間が5年以下の者に対してこれらに係る賠償を認めなかった部分の原判決を破棄し、損害額等の審理を尽くさせるため原審に差し戻しました。

 「年始期間の勤務に対する祝日給は、(注;正社員のみ年始に)特別休暇が与えられていることとされているにもかかわらず最繁忙期であるために年始期間に勤務したことについて、その代償として、通常の勤務に対する賃金に所定の割増しをしたものを支給することとされたもの」と解されるところ、前述のとおり、本件契約社員は「繁忙期に限定された短期間の勤務ではなく、業務の繁閑に関わらない勤務が見込まれている。そうすると、最繁忙期における労働力の確保の観点から、本件契約社員に対して上記特別休暇を付与しないこと自体には理由があるということはできるものの、年始期間における勤務の代償として祝日給を支給する趣旨は、本件契約社員にも妥当するというべきである」と判示しました。

イ 扶養手当は「正社員が長期にわたり継続して勤務することが期待されることから、その生活保障や福利厚生を図り、扶養親族のある者の生活設計等を容易にさせることを通じて、その継続的な雇用を確保するという目的によるものと考えられる。」そして、この目的に照らせば、「本件契約社員についても、扶養親族があり、かつ、相応に継続的な勤務が見込まれるのであれば、扶養手当を支給することとした趣旨は妥当するというべきである」とし、前記(3(2)イ)同様、本件契約社員は「相応に継続的な勤務が見込まれているといえる」と判示し、扶養手当の有無という労働条件の相違は不合理であるとしました(原審破棄差戻し)。

ウ なお、夏期冬期休暇(④)に係る請求については、前記(3(2)ウ)同様の理由が示され原審の判断は正当とされ、この部分の第1審被告の上告は棄却されました。

執筆 弁護士 奥岡眞人

「労務税務定期便」No.43送付のごあいさつ

 お目通しいただきありがとうございます。私どもは、使用者側の法律事務所として、登美ヶ丘(学園前)を拠点に、数十社の企業様、医院様、自治体様の顧問弁護士を担当しております。このたび、私どもの経験、ノウハウなどをお伝えする「労務税務定期便」を発行いたしました。
先生方におかれまして、ご笑納いただければ幸甚です。

代表弁護士 奥岡眞人
大阪弁護士会所属
代表弁護士 奥岡 眞人

所属弁護士(奈良弁護士会所属)

■ コラム ■

懐かしい奈良の写真

 年の瀬が近付く中、懐かしい景色の話題をお届けします。奈良県立図書情報館のホームページに、「奈良の今昔写真WEB」というコーナーがあります。

 東大寺や橿原神宮などの明治・大正の頃の様子もあれば、懐かしい遊園地の写真もあります。あやめ池遊園地の写真を見て、「そうそう、象がいた!」と過去の記憶がよみがえりました。

 県内の中核都市、橿原、高田、王寺などの懐かしい姿もみられます。今は住宅地となった学園前や高の原の開発前の様子も、白黒写真やカラー写真で楽しめます。近鉄学園前駅が平屋建てだった頃(昭和20年頃)の写真は、もはや歴史的な証拠写真といえます。

 県立図書情報館では、写真の提供を呼びかけているようです。写真はまだまだ増えていくかもしれません。
インターネットの時代になって、むしろ、昔の写真をみんなで楽しめるようになりました。写真を見ていると、いつの時代も奈良人は元気いっぱいで、現代の私達を励ましてくれているように感じました。

奈良県立図書情報館 奈良の今昔写真WEB

https://www.library.pref.nara.jp/supporter/naraweb/syasinweb.html
(「奈良の今昔写真WEB」で検索できます。)

執筆担当 弁護士 小川哲史

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