労務税務定期便 No.26 2019年7月15日号

定期借家契約を巡る紛争について(2)

1 前回は、借地借家法38条1項、同2項及び同3項すなわち、定期借家の特約の成立要件と同要件に係る紛争の形態を解説しましたので、今回は、主として、契約終了時に必要な手続と同手続に係る紛争を解説したいと思います。

借地借家法38条4項

「第一項の規定による建物の賃貸借(注;定期借家契約)において、期間が一年以上である場合には、建物の賃貸人は、期間の満了の一年前から六月前までの間(以下この項において「通知期間」という。)に建物の賃借人に対し期間の満了により建物の賃貸借が終了する旨の通知をしなければ、その終了を建物の賃借人に対抗することができない。ただし、建物の賃貸人が通知期間の経過後建物の賃借人に対しその旨の通知をした場合においては、その通知の日から六月を経過した後は、この限りでない。」

2 終了通知が求められている理由

 定期借家契約では、期間の満了により必ず契約が終了しますが、期間満了時に、賃借人がそのことを忘れて明渡の準備ができていないと、賃貸人及び賃借人の双方(特に賃借人)が困った状態になるので必要とされた手続です。そして、法は、明渡の準備期間として最低6ヶ月は必要と考えて、終了通知は「期間満了の・・・六月前まで」に為すべきものと定めました(4項本文)。ただし、賃貸人がうっかり6ヶ月前までに通知を出すことを失念した場合に備えて、「通知期間の経過後」に通知した場合は、通知後6ヶ月が経過すれば契約終了を対抗できるものとしました(4項ただし書)。

3 期間満了後の終了通知について

 「通知期間の経過後」であるに止まらず、契約期間満了後に終了通知をした場合も同様でしょうか。すなわち、4項ただし書には「通知期間の経過後」としか記載されておらず、必ずしも明らかではありません。この点に関し、賃貸人が契約期間満了から約3ヶ月半経過後に終了通知をし、その6ヶ月経過後に明渡を求めた事案において、賃借人が「終了通知が発せられないまま期間が経過したので普通借家契約と同様の法律関係となったところ、賃貸人には正当事由がないので契約は終了しない」と主張して争いました。これに対し、平成21年3月19日東京地方裁判所判決は、あまりにも長期にわたって終了通知がないような事例では権利濫用論や信義則により賃貸人の明渡請求が制限される余地のあることを認めながらも、約3ヶ月半経過後に終了通知がなされたこの事案では、賃借人の主張を容れず、賃貸人の明渡請求を認めました。

 では、賃貸人は、契約期間満了後いつまでも終了通知を出すことができ、賃借人は、いつでも、終了通知を受ければ、その6ヶ月後に明渡をしなければならないのでしょうか。もちろんそうではありません。賃借人の予測可能性を奪い、その地位が非常に不安定なものとなるからです。

 この点につき、契約期間満了から約6ヶ月後に終了通知を出したものの、再契約の条件が折り合わずに時間が漫然と経過し、契約期間満了の3年後にようやく再契約をした事案につき、諸事情を勘案した上で、契約期間満了の一年後に(口頭による)普通賃貸借契約が成立し、その後、同契約が更新されたとして、賃貸人の明渡請求を棄却した裁判例があります(H27/2/24東京地裁)。

 なお、終了通知の手続を定めた38条4項の定めは、賃借人の保護のために特に設けられた規定ですので、たとえば、通知期間経過後の終了通知につき通知後3ヶ月が経過すれば契約終了を対抗できるとするなど、この定めに反する特約で賃借人に不利なものは無効です。(借地借家法38条6項「前二項(注;38条4項及び5項)の規定に反する特約で建物の賃借人に不利なものは、無効とする。」)

4 賃借人の中途解約権

 そして、同様に、賃借人の保護のために特に設けられた規定として、小規模住居の賃借人による中途解約権の定めがあります。

借地借家法38条5項

 「第一項の規定による居住の用に供する建物の賃貸借(床面積(建物の一部分を賃貸借の目的とする場合にあっては、当該一部分の床面積)が二百平方メートル未満の建物に係るものに限る。)において、転勤、療養、親族の介護その他のやむを得ない事情により、建物の賃借人が建物を自己の生活の本拠として使用することが困難となったときは、建物の賃借人は、建物の賃貸借の解約の申入れをすることができる。この場合においては、建物の賃貸借は、解約の申入れの日から一月を経過することによって終了する。」

 よって、たとえば、小規模住居の定期借家契約において、「中途解約の場合、契約期間の残金を支払った場合に限り解約できる」すなわち、全額支払わない限り中途解約できないとの特約は、38条5項の規定に反する特約で賃借人に不利なもの(借地借家法38条6項)ですから無効です(H20/9/25東京地裁)。

執筆担当 弁護士 奥岡眞人

「労務税務定期便」No.26送付のごあいさつ

 お目通しいただきありがとうございます。私どもは、使用者側の法律事務所として、登美ヶ丘(学園前)を拠点に、数十社の企業様、医院様、自治体様の顧問弁護士を担当しております。 このたび、私どもの経験、ノウハウなどをお伝えする「労務税務定期便」を発行いたしました。
先生方におかれまして、ご笑納いただければ幸甚です。

代表弁護士 奥岡眞人
大阪弁護士会所属
代表弁護士 奥岡 眞人

所属弁護士(奈良弁護士会所属)

■ コラム ■

~ 台風のニックネーム ~

 今年の七夕の夜は、いかがお過ごしでしたでしょうか。季節的に、台風の話題が増えてきました。天気予報でも、台風に“ニックネーム”があることが紹介されるようになりました。

 平成12年の台風1号から、アジア各国が構成する台風委員会が、ニックネームを付けることになりました。140個のリストが用意されていて、毎年発生順に名前が付けられます。記念すべき第1号は、「ダムレイ」で、カンボジア語で、「象」の意味でした。

 リストには、各国から推薦された名前が並んでおり、日本が提供した名前には、「コイヌ」「ウサギ」「クジラ」などがあります。各国のお国柄が出ており、「ウーコン」(孫悟空)(中国)、「ライオンロック」(山の名前)(香港)、「メーカラー」(雷の天使)(タイ)、「チャーミー」(花の名前)(ベトナム)など、多種多彩です。

 ちなみに、大西洋で発生するハリケーンにも、昔からニックネームが付いています。これは、アメリカの国立ハリケーンセンターが毎年リストを更新し、発生順に名前を付けていきます(なぜか、ニックネームは、人名だけです)。

 雲や天気に名前と付ける、というのは、新しいように感じますが、人類は、太古から、星に名前をつけ、星座を形作って、神話や民話と結びつけていました。

 七夕の前には、日本の風物詩としても、「七夕に夜に、天の川が見られるのか、台風が来るんじゃないか」といったように、星や台風の話題が出ます。そう考えると、織姫と彦星の話に、ダムレイ(象)やウーコン(孫悟空)が登場するというストーリーも文学的なように感じます。

 大空での壮大なドラマに思いを馳せ、夏の暑さを吹き飛ばそうではありませんか。

執筆担当 弁護士小川哲史

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