パワハラ防止の義務化について


1 「パワハラ」が法律で規定されました

 今まで、法律の明文で「パワハラ」(パワーハラスメント)についての規定はありませんでした。もちろん、今までも「パワハラ」を理由に損害賠償が認められるケースは沢山ありましたが、どんな場合に「パワハラ」になるのか、企業は何をすべきなのかについて、直接の規定はありませんでした。

 ハラスメントの分野での規制については、2017年には「セクハラ」防止がLGBTを対象に拡大され、また、「マタハラ」(妊娠出産等ハラスメント)について指針が定められていました。今回、「パワハラ」が規定されたことにより、3つのハラスメントの防止が揃ったことになります。

 今回の法律では、「パワハラ」を、次のように定義しました(労働施策総合推進法30条の2第1項)。

 ①職場において行われる優越的な関係を背景とした言動であって、
 ②業務上必要かつ相当な範囲を超えたものにより、
 ③その雇用する労働者の就業環境が害されること

 略語としては、「優越的言動問題」という言葉を使っています。今後は「パワハラ(優越的言動問題)」という表現が増えてくると思われます。

 この定義が出来たことは、労務管理に大きなインパクトを与えると考えられています。この法律が施行されるのは、大企業は2020年4月から、中小企業は2022年4月からと見込まれています。

2 法改正の内容

(1)防止のための事業主の義務

 事業主には、パワハラ防止の措置義務が規定されました。

 法律では、「労働者からの相談に応じ、適切に対応するために必要な整備その他の雇用管理上必要な措置を講じなければならない」と規定されています。

 相談窓口を決め、相談があった場合の調査や対応のフローなどを決めておくことが義務になりました。

(2)相談等による不利益取扱いの禁止(同法30条の2第2項)

 パワハラについての相談や調査協力を、労働者が躊躇しないように、パワハラの相談したこと自体や調査に協力したことによって、不利益を与えてはならないという規定です。

 法律の条文では、「事業主は、労働者が前項の相談を行ったこと又は事業主による当該相談への対応に協力した際に事実を述べたことを理由として、当該労働者に対して解雇その他不利益な取扱いをしてはならない」と規定されています。

(3)指針等の整備

 上記(1)(2)の具体的方策について、ガイドラインなどを厚生労働大臣が整備することになりました。

 以前から、厚生労働省のホームページでは、パワハラ対策のガイドラインが多数紹介されていましたが、今後、これらのガイドラインが整理され、法律の根拠に基づいた正式なガイドラインとなります。おそらく、相談窓口の整備、加害者への懲戒規定、調査フロー、プライバシー保護などについて、規定が整備されると思われます。

(4)国や事業主・労働者の責務、紛争解決手段

 国には広報・啓発活動などの努力義務が規定され、事業主も研修などを行って必要な配慮を行う努力義務が規定されました。

 また、パワハラの問題が、労働局による援助、指導、勧告、調停の対象になることになりました。

3 罰則はあるのか

 今回の改正では、罰則は規定されませんでした。

 しかし、従来どおり、加害者が暴行罪や、強要罪、脅迫罪などの犯罪で検挙されることはありえます。また、就業規則による懲戒や、民事の損害賠償の対象となるのも、従来どおりです。

 もっとも、参議院の付帯決議において、ハラスメント行為自体の規制の検討が入りました。将来的には、加害者のパワハラ禁止や企業の措置義務違反が、刑事罰の対象として検討されることは、ありえると思います。

4 パワハラの判断

 ケース・バイ・ケースになりますが、上記2の法律の要件のうち、2つ目の「業務上の必要かつ相当な範囲」内であるのかが、一番の焦点となります。この必要性と相当性を、目的と手段から個別に判断することになります。

 今回の法改正の前ですが、厚生労働省の円卓会議の提言(厚生労働省・職場のいじめ・嫌がらせ問題に関する円卓会議提言2012年3月)では、パワハラの典型的な種類を次のように分類していました。

 ①暴行・傷害(身体的な攻撃)
 ②脅迫・名誉棄損・侮辱・ひどい暴言(精神的な攻撃)
 ③隔離・仲間外し・無視(人間関係からの切り離し)
 ④業務上明らかに不要なことや遂行不可能なことの強制、仕事の妨害(過大な要求)
 ⑤業務上の合理性なく、能力や経験とかけ離れた程度の低い仕事を命じることや仕事を与えないこと(過少な要求)
 ⑥私的なことに過度に立ち入ること(個の侵害)

 もちろん、ケース・バイ・ケースですが、私見では、上記①や②であれば、手段が不相当ですので、パワハラに該当することが多いと思います。これに対し、④から⑥については、「業務上の必要性・相当性」の判断は、職場や業種、具体的場面、態様、頻度などによって微妙な判断になると思います。

5 弁護士の活用方法

(1)「問題社員対策」としてのパワハラ禁止

 良い人材を育て、定着率を上げるためには、パワハラ対策は必須だと考えます。一人のパワハラ加害者のために、職場環境が悪化しているという例は、珍しくありません。例えば、対象者に研修を重ね、改善がみられない場合は、指導や配置換えなども検討するという方策があります。

 パワハラ防止は、事業者の義務になりました。この法改正の流れに乗って、パワハラを防止し、みんなが気持ちよく力を発揮できる職場環境に変えていかれることとお勧めします。

 弁護士がプランの立案から実施まで、サポートすることができます。

(2)研修の講師

 今後、企業では、従業員向けに「パワハラ」防止の研修を実施することが求められます。

 弁護士が裁判まで発展した実例に基づき、ロール・プレイング方式で、研修を行わせていただくこともできます。御社の実情をお聴きしたうえで、効果的な研修内容をご提案させていただきます。

(3)規定の整備、運用

 厚生労働省のガイドラインを踏まえて、就業規則や内部規定をバージョンアップする必要が出てきます。顧問の社労士の先生とタイ・アップして、実効的なルールを策定いたします。

 相談があった際の実際の対応、調査の実施、処分の決定に至る手続きを、顧問弁護士としてサポートいたします。


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